#472. ヘミングウェイ海流のなかの島々風ジン・トニック改

2001-08-06

トマス・ハドソンはバーに入った。中は涼しくて、珊瑚土のまぶしい照り返しに慣れた目には、真っ暗に見える。ジン・トニックにライムの薄切りを一枚、それにアンゴスツラ・ビターズを数滴落としたのを一杯飲んだ。
...(中略)...
トム、あんた本当にその酒をうまいとおもっているのかね?ボビーが聞く。
そうさ。嫌いなら飲まん俺、いつか間違って一本封を切っちまってね。キニーネみたいな味がしたぞ事実、キニーネが入っている気狂いだね、人ってものは。どんな酒飲んでもかまやしない。払う金はある。楽しみで飲む----なのに、よりによって、上等のジンを、インド風だか何だか、キニーネ入りの訳の分らんものの中に割って台無しにするとはな私にはうまいのさ。キニーネの味がレモンと一緒になったところがいい。胃袋の毛穴だなかんだか知らんが、開いたような気がしてな。ジンを入れる酒の中じゃ、これが一番いけるな。良い気分になれる

-- アーネスト・ヘミングウェイ著、沼澤洽治(ぬまさわこうじ)訳, 海流のなかの島々

あちー。もうだめだー。

週末の昼下がり。買い物から帰宅すると、汗でぐずぐすになったシャツを引き剥がすようにしてバス・ルームへ飛び込み、シャワーを浴びる。それから、冷蔵庫から氷とジントニック・ウォーターソーダ水を取り出し、ヘミングウェイ海流のなかの島々風ジン・トニックを。なに、簡単だ。グラスに氷を放り込んで、ジンをトポ。トニックウオーターをどぼどぼ。ソーダ水をどぼどぼ。ビターをワン…ツゥー…スリー・ダッシュ。それから一口啜れば、気分は地獄と天国の間をふわふわ。カーテンの向うは、まだのジリジリする陽射し。

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