#702. 春の気分

2006-04-18

或春の夜、僕は路ばたに立ち止つた馬車の側を通りかかつた。馬はほつそりした白馬(しろうま)だつた。僕はそこを通りながら、ちよつとこの馬の頸すぢに手を触れて見たい誘惑を感じた。

-- 芥川 龍之介, 春の夜は

の夜を抜けて帰宅。ブラインドを上げて窓を開け、柔らかで暖かな夜気を呼び入れる。缶ビールのプルを引き、夜空を見上げながら一口二口。

そうして、緩やかな不思議なの気分を楽しむ。の夜の胸の底から、ゆるやかな角度で立ち上がるの気分を。の夜の胸の底から、数ミリの速度で持ち上がる潮のようなの気分を。何をしたいとも思わずに、ただ、謎のように立ち騒ぐ胸の気分を。

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