#309. 浅き春

2000-02-23

今は 二月 たつた一度だけ
夢のなかに ささやいて ひとはゐない
だけれども たつた一度だけ
そのひとは 私のために ほほゑんだ

さう! 花は またひらくであらう
さうして鳥は かはらずに啼いて
人びとは春のなかに笑みかはすであらう

-- 立原道造, 浅き春に寄せて

風が止んだ。ほんの少しだけ、数日来の寒さが和らいだような気がする。

会社からの帰宅の途中、マフラーをバッグに放り込み、コートのポケットから手を出し、てくてく歩く。

の樹の下で、薄い闇を通して枝を見上げる。もちろん、そこには何もないのだけれど。

関連記事

立原道造
  • more 詩人: 13 ...

新着記事