#911. 春に酔える者 - 酒はあっても全部は呑めぬ

2012-05-05

處世若大夢
胡爲勞其生
所以終日醉
頽然臥前楹
覺来眄庭前
一鳥花間鳴
借問此何時
春風語流鶯
感之欲歎息
對酒還自傾
浩歌待明月
曲盡已忘情

世に處るは大夢の如し
なんすれぞ其の生を勞せんや
このゆえに終日醉い
頽然として前楹に臥す
覺め来たって庭前を眄めやれば
一鳥花間に鳴く
借問す 此れ何れの時ぞと
春風は流鶯と語らう
之に感じて歎息せんと欲し
酒に對して還た自ら傾く
浩歌して明月を待ち
曲盡きて已に情を忘る

-- 李白, 春日醉起言志

これはグスタフ・マーラーの交響曲大地の歌第5楽章春に酔える者のもとになった漢詩。

この世にあることは
夢のようだから
生きることに
あくせくすることは無いだろう
だから
こんなふうに終日
酔っている
柱に寄りかかって
すっかり酔いつぶれてしまったのだ
目が覚めて
前庭に視線を彷徨わせると
花咲いた枝の間を
鳥が跳んで鳴いている
ああ このときは何時なのだ
春風と鶯の声が語らっている
思わずため息をついて
もう一杯 酒を呑み 声をあげて唄を唄い
昇る月を待ったが
いつの間にか 唄は尽きてしまい
酔いつぶれてしまったようだ

-- (はなはだアヤシイ) 訳: めりた・グッドボーイ, 春日に酔いより起きて志しを話す

酒はあっても全部は呑めぬと、最近、思う。斗酒あれど、気分良く呑めるはせいぜいが数合、一升。

とすれば、気持よく呑めるこそが貴重に思える。ゆるゆる、しずしずと、そんな風に呑めるこそが貴重だと思う。

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