#85. 春を思う深い眠り

1999-01-26

桜の樹の下には屍体が埋まっている!
これは信じていいことなんだよ。何故って、の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だった。しかしいま、やっとわかるときが来た。の樹の下には屍体が埋まっている。これは信じていいことだ。

-- 梶井基次郎, 桜の樹の下には

毎年この時期になるとを思う。眠りの中で幾度も。でも、しかし、目覚めて思い出すことのできるのは、闇の中で散る大きな一本の樹だけだ。そうだ、周りには人の気配が感じられない。一体、僕の夢に現れるの樹は、何の暗喩なのだろう? まるで、梶井基次郎の書くところのの樹の下の屍体こそ僕ではないか…。

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