Aspects of Love II

2002-11-03

レンアイ詩集 「Aspects of Love」の続き… 2000年7月から2002年10月まで 「夜の翼 - My heart is not digital.」で書いてきた詩をまとめました。

#369. ショート・ステイ

2000-07-19

夏の夕暮れ時の路上で
焼鳥屋に引っかかって
ホッピー呑んで焼鳥を食って
それでも 30 分はもたない
ああ まだ夜はやって来ないよ
でも
ホッピー呑んで焼鳥を食って
なんだかしあわせ (そうじゃないかい?)

冷房なんかない店だから
道路に大きく開け放された扉や窓から
商店街がよく見える
明日のことは心配だけど
とりあえず呑もうと思ってしまう
夕暮れ時の風景
ホッピー呑んで焼鳥を食って
なんだかしあわせ(そうじゃないかい?)

そんなに悪い日じゃなかったと
とりあえず言っておこう
ホッピー呑んで焼鳥を食って
なんだかしあわせ (そうじゃないかい?)

#376. 降りて行く

2000-08-07

いつものバーで
ショート・カクテルを二三杯
それから
夜の底へと降りて行く

#380. ラスト・レター

2000-08-13

もうキミのことなんか忘れてしまった
どんな匂いだったとか
どんな服を着ていたとか

もうキミのことなんか忘れてしまった
メールは削除してしまったし
写真も捨ててしまった

もう忘れてしまった
全ては夢のようなものだ
もう思い出さない

#382. 夏の夕暮れには

2000-08-19

開け放した窓
遠くの樹々が風に揺れている
夏の夕暮れには幸せな予感がする

#388. 雑踏のフルムーン

2000-09-12

夕暮れの街に
歩く速度にあわせて
夜はやってくる

雑踏とビルの向こうには
群青色の空に浮かぶ満月
中秋の名月

夕暮れの街に
車のヘッドライトとともに
夜はやってくる

雑踏には煙草の匂い
誰も見上げようとしない空に浮かぶ満月
中秋の名月

#399. 水辺(みずべ)

2000-10-19

明け方 獣たちの唄う声

霧が渡る湖水を眺め
水面(みなも)に優しく指を触れる
夢だと思いながらも
それでも 僕は
君を抱きしめた

明け方 獣たちの唄う声

暗い水辺(みずべ)で
僕らは幾度も愛を交わしながら
コトバを交わすことはなかった
夢だと思いながらも
それでも 君に
愛していると言って欲しかった

遠くには 獣たちの唄う声

無くしてしまったものを
諦めてしまったものを
それでも恋しいと唄う声

#406. 闇の底に降る雨

2000-11-21

夜半に独り寝台で目覚め、深い闇の底で雨音を聴く。

#410. シルバー・モーニング

2000-12-01

朝まだき
冷たい雨の降る小径を
独り歩く
濡れた落葉を踏みながら
どこまでも

両手は冷たく悴(かじか)んでいる
それでも
僕は小さく口笛を吹きながら
銀色の朝の中を
歩いて行く

#430. 闇の底の春

2001-03-11

凍りついた地の底にも春は降りてくる
深い眠りの中でも それを感じている
風も無く 光も無く 深い闇の底の春

#467. 地下のバーから

2001-07-15

地下のバーから地上への階段の途中
ポケットに手を突っ込んだまま
キスをする

ブショウモノ、と彼女は言い
僕の胸を人差し指でずんと突く

地上の暗闇には
こもったような熱気
足元のバーから昇って行くには
ちょっとだけ勇気が要る

で、もう一度
彼女に触れてキスをする
カクテルの甘いテイスト

ブショウモノ、ともう一度、彼女が言う

#483. 雨に酔う

2001-09-21

店から出ると雨だった

ポケットに手を突っ込み
夜の闇を軒下から透かし
降る雨を見ている

昨日までの蒸し暑さが
嘘のようだ
秋雨と呼べるほど
寒く 冷たく 寂しい雨が
ようやく降った

もう一杯だけ
酒を呑みたい気分

#531. 雨の金曜日の夜は

2002-05-18

雨の金曜日の夜は
映画日和
独り
映画館の
最後の上映に滑り込む
まばらな観客と
少し湿気を含んだ闇と
僕の瞳は
スクリーンの向こうに
どこまでも広がる
雨降る闇を観る

雨の金曜日の夜は
映画日和
独り
以前に観た映画を
再び観たくなる
まばらな観客と
少し湿気を含んだ闇と
僕の心は
スクリーンの向こうに
どこまでも広がる
雨降る闇へ歩いてゆく

#549. 君が嘘をついた

2002-09-01

君が嘘をついた
僕にはわかってしまった

深夜の街を二人で歩きながら
空疎な会話を繰り返す

君が嘘をついた
それがわかってしまったから
僕は口を閉ざしたかった

でも
薄暗い街灯の下
空疎な会話を繰り返す

さよなら
と心で呟いてみる
さよなら
と君が言ったような気がした

薄暗い街灯の下
空疎な会話を繰り返す

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